DXトレンド② ―システムの役割の変遷―

テク仁(えんまん七福仁 IT技術担当)のつぶやき – その2

EnMan社にてCTOを勤めさせて頂いている石井慎一郎です。
EnMan社が、一流IT企業との開発・PMO連携、サービス事業提供、更なるアジア圏ビジネス隆盛を目指す中で、その背景にある昨今のIT技術やシステム動向について徒然なるままに認めます。

前回のコラムでは、現在の「DX」トレンドについて自分なりの理解の仕方について呟いてみました。
今回は、このトレンド下にて、所謂企業システムではどんな変化が起きてきているのかについて整理してみます。

システムの役割の変遷

■基幹系業務へのコンピューターの導入
企業活動において、事業運営そのものを担うシステムを基幹系業務システムと呼びます。例えば、製造業では生産管理業務、流通業や運輸業では配送管理業務、金融機関では勘定系システムなどが挙げられます。
従来は、メインフレームコンピューターによる一極集中の処理形態で実現されていました。基本的に大量データ処理を高信頼性を以て迅速に対応することが目的になっています。

■部門サーバーの導入、EUC(End User Computing)…集中から分散へ
ミニコン、ワークステーションの台頭により、各部門に導入することにより、伝票の入出力のみならず、基幹業務の一部も部門で行うような分散型の業務遂行が可能になってきました。例えば、各部門でデータ入力の際に集計を行い、集計後のデータだけメインフレームに送るようなことなども行われました。そうすると、部門側で業務の進行状況をリアルタイムで把握して施策を打ったり、定期的な状況把握に向けたグラフ化なども容易に行えるようになるわけです。

■システムの役割の拡大
上記分散化のトレンドを受けて、システムの役割も拡大し、企業のコンピューターシステムの役割も大きく3つに分かれてきました。

  • 従来の基幹系業務システムに加えて、
  • チャネル系システム:顧客への販売チャネルを統括するシステムです。現在では、ネット販売も含めて販売チャネルも多岐に渡ってきていることから、重要になってきました。
  • 情報系システムとは、現場の作業のため、つまり生産性や効率化を検討するための情報提供に加えて、経営判断のために顧客情報やチャネル毎の販売情報などから顧客戦略を考える際に必要な情報を供給する重要なシステムとなっています。

更にDXトレンドを受けて

改めて、前回述べた内容を再度、整理してみます。DXトレンドの大きな事象として、データ分析術の進化による「見える化」推進について述べました。つまり、従来、なんとなくそうだと理解していた事柄、永年培われた伝承技術について、数値化することで見えないノウハウから見える・使える知識に昇華するとしてまとめました。
この状況が、上記の3種類のシステムにどんな変化を与えているのでしょうか。

  • チャネル系システム:物や事に対する「認識力」が向上しています。「認識力」自体は、次に述べる情報系システムとの連携で実現しているのですが、例えばIoTで使われるセンサー技術やカメラ技術を活用した自動運転の研究でも分かるように、そもそもの対象をデータとして取り込む技術が格段の進歩を遂げています。スマホのカメラの進歩…でも、お分かりですよね。

さらに、いつでもどこでも「リモート」型でのサービス提供・活用できるようになっていることも大きな影響となっています。これは、スマホ普及率の爆発的な伸びを背景にしていることは言うまでもありません。

  • 情報系システム:チャネル系システムから詳細な(即ち大量の)画像等のデータを受け、それをAI技術やビッグデータ技術を活用して、「物」、「事」として認識する、さらには各種予兆まで行えるようになってきています。つまり、従来はあくまでも事実に基づく参考(数値)情報であったものが、誤解を恐れずに言えば、さらに確度を伴う提言的な内容まで来ていると言えます。
    最近の囲碁、将棋の中継では、AIでの最善手予測、形勢判断などが行われているのが端的な事例になります。

一方、基幹業務系システムについては、逆に徹底的に付加価値向上を伴わない業務の「自動化」推進が為されることになります。例えば、単なる転記などのルーティン作業は、RPAの導入などによって、徹底的に効率化が図られることになります。
更に、自前でシステムを保持するのではなく、クラウドサービスの活用によるスリム化推進との影響も大きなものになっています。

つまり、3つの大きな種類は変わらないとしても、それぞれが求める方向・目標感が、図のように明確になってきている時期だと言えるでしょう。

さて、次回はこのようなトレンドの中で出てきているSoR、SoEという用語を解説します。さらに、以降では、システム開発プロセスへの影響についても採り上げてみようと思っています。

この記事の執筆者

石井 慎一郎

1984年 東京大学卒、日本電気㈱入社
ソフトウェア開発研究部門 配属(18年) 、金融システム開発、SI部門(13年)、グローバルビジネス推進部門(CTO)(3年)
時代の最新ソフトウェア・アーキテクチャの研究開発経験を礎に、ビジネスの最前線への適用、大規模SIでの顧客対応、最新技術プロダクトのグローバル展開を行った貴重な経験を持つ。
2018年末 日本電気㈱退職。個人事業主にてIT領域で企画・開発支援等、幅広く活動。
2020年7月~ EnMan Corporation 取締役CTO